お口の衰えと健康への影響

ー噛むことは生きることー

オーラルフレイル

そもそもフレイルって何?

「フレイル(虚弱)」とは…

高齢になって心身の活力(筋力、認知機能、社会とのつながりなど)が低下した状態をいいます。 筋力などの身体機能の低下より先に、社会参加など他者との交流が減ったり、口の機能が衰えること(オーラルフレイル)から始まります 。

オーラルフレイルって何?

「オーラルフレイル」とは・・・口に関する”ささいな衰え”が軽視されないように、口の機能低下、食べる機能の障害、さらには、心身の機能低下までつながる”負の連鎖”に警鐘を鳴らした概念です。

こんな症状には要注意!

オーラルフレイル当てはまるものはありますか?

オーラルフレイルのレベル

オーラルフレイルの状態を放置すると、下図のように全身の健康レベルの悪化を招きます。第3レベルになると「口腔機能低下症」という疾患として診断されます。

口腔機能低下症について

口腔機能低下症とは

口腔機能の検査によって、お口の機能が複合的に低下していると診断される疾患です。
放置していると咀嚼障害、摂食嚥下障害など口腔機能障害に陥り、低栄養やフレイルを進展させるなど全身の健康を損なう恐れがあります。
高齢者においては、加齢や基礎疾患によっても口腔機能が低下しやすく、低栄養や薬剤の副作用等によって複雑な病態を示すことがあります。

最近、お口の健康に関心が薄くなっていませんか?
歯磨きの回数や時間が減ったり、義歯の不調があっても歯医者さんに行かなかったりすると、むし歯や歯周病が進行し歯の数が減ってしまいます。
そうなると食べる力が低下して、食べにくい野菜やお肉を避けてしまいます。すると栄養の偏りやエネルギーの不足になり、全身の健康に影響を及ぼします。

一方、オーラルフレイルは、わずかなむせや食べこぼし、滑舌の 低下といった口腔機能が低下した状態を示すものであり、一般に分かりやすく用いる用語です。
従って、オーラルフレイルと口腔機能低下症はオーバー ラップされる部分が多くあります。

口腔機能低下症の検査項目内容

口腔機能低下症の検査例(この検査のみで診断されるわけではありません)

口腔機能の検査項目例

■舌口唇運動機能評価

パ・タ・カ(オーラルディアドコキネシス)
パ・タ・カそれぞれの音節を、「パパパパ・・・」など5秒間でできる発音回数を計測する。
パ・タ・カのいずれかの1秒当たりの回数が6回未満の場合は、舌口唇運動機能低下と判定する。

飲み込み(嚥下)機能評価

EAT-10
以下の10個の各質問に対して、問題なし(0点)~ひどく問題(4点)までで採点し、合計3点以上の場合は、飲み込み機能に障害がある可能性があります。

1)飲み込みの問題が原因となり、体重が減少した
2)飲み込みの原因が外食に行くための障害となっている
3)液体を飲み込む際、余分な努力が必要である
4)固形物を飲み込む際、余分な努力が必要である
5)錠剤を飲み込む際、余分な努力が必要である
6)飲み込むことが苦痛
7)食べる楽しみが飲み込みの問題によりがある
8)飲み込むときに食べ物が喉に引っかかる
9)食べるときに咳が出る
10)飲み込むことにストレスが大きい

お口を鍛えて介護予防!

お口の衰え(オーラルフレイル)は、死亡リスクや要介護リスクが2倍以上になるというデータがあります

噛む・飲み込む機能が低下すると、栄養を摂取しづらくなるとともに、誤嚥性肺炎などの感染症のリスクも増加します。こうして心身の機能も低下していくことで、死亡リスクや要介護リスクが高くなると考えられます。

歯の本数と要介護認定との関係

65歳以上の健康な人を対象として、4年間、要介護認定の状況を追跡した調査によると、歯が19本以下の人は、20本以上の人と比較して、要介護認定を受ける割合が1.2倍に上昇することがわかりました。

また、日本人を対象とした別の研究では、歯が多く残っている人や歯が少なくても義歯を入れている人では、そうでない人と比べて認知症発症や転倒の危険性が低いことがわかっています。

「噛めること」ってなぜ大切なの?

脳の表面の約4割は、歯・顎・唇・舌など「噛んで飲み込む」ために使われています。噛んで食べて飲み込むことで五感が刺激され、思考や学習、記憶を司る脳が活発化します。

お口の機能が低下すると、低栄養の状態になったり、生きる意欲が低下したりして、介護が必要な状態になっていきます。健康な生活を送るためには、お口の機能を維持することが欠かせないのです。

口腔体操で介護予防!

お口の衰え(オーラルフレイル)を予防して、一生健康に過ごしましょう!

口腔体操はこちら

要介護者への口腔ケア

お口のケアで高齢者の肺炎が40%減少したという報告があります。
さらにインフルエンザの発症率が10分の1になった例もあります。
お口のケアには、歯みがき・歯石除去・歯肉マッサージ・唾液腺マッサージなどがあります。
口内マッサージなどによる刺激は脳を活性化させる働きもあります。

口腔ケア時の注意点

1.多くの水や洗浄剤を使用しない

口腔咽頭機能が低下すると、口の中に水をためていることが苦手になります。口腔ケアを行う際に、水分の多いスポンジや綿棒を使用したり、洗浄を目的に多くの水や洗浄剤を使用すると、水分がのどに落ち込み、そのまま誤嚥されてしまう恐れがあります。

2.顎部を前屈させて咽頭に流入しないように配慮する

顎部を前屈すなわち、顎を引く姿勢は、口の中に水をためていられやすい姿勢です。この姿勢により、のどの中に汚れた水を落とし込まないようにします。

3.しっかり歯ブラシを洗いながら、ふき取りながらケアをする

歯をこする歯ブラシには口腔ケアの過程で多くの汚れ(細菌のかたまりや食べ物の一部など)が付着します。それをコップに入れた水などでしっかりと洗い、なるべくきれいにして、ティッシュなどで水分を拭いてから歯ブラシを口に戻すようにします。歯ブラシによる清掃をある程度したら、口腔ケア用のウェットテッシュなどで、丹念に粘膜をふき取りながら口腔ケアを行うことも重要です。うがいが出来ない人などには有効な方法です。

なんで?どうする?動画でわかる口腔ケア(YouTube)

富山県歯科医師会は、実際の口腔ケアの実演が何度でも視聴してもらえるよう、基本から応用まで9つのトピックに分け、それぞれ6分程度にまとめた動画を制作しました。

歯科医院や介護の現場における研修としてお役立てください。

富山県歯科医師会【公式】YouTubeチャンネル